2013年4月10日水曜日

Morrison 判決勉強会

昨日の勉強会ではMorrison 最高裁判決をとりあげた。
判決文だけ読んでいても、何かもやもやした感じだったのだが、Professor Dodgeがこの判決に関して設定した設問を考えているうちに、輪郭がつかめてきた気がする。

最高裁はtransaction testと言っているが、その内容として、米国内での売買、または、米国の証券取引所のリストに掲載されている証券の売買 (whether the purchase or sale is made in the United States, or involves a security listed on a domestic exchange) としている。

Professor Dodge の設問は、米国の会社がドイツの会社を合併するためにドイツで契約し、クロージングのみ米国内で行ったが、ドイツの会社の資産内容の開示に虚偽があった場合、10bは適用されるか、契約地は重要か、というもの。

売買の対象となっている株式はドイツで発行されており、米国証券取引所で取り引きされていない。
最高裁判決前であれば、conduct test とeffect testによって、行為地が米国内か、効果が米国内に及んでいるか、を検討して米国証券取引法の適用の可否が判断されたはずであるが、Morrison判決に従うと、売買地が米国内であるか、または、売買の対象が米国証券取引所のリストに掲載されているか、で適用が判断される。
適用の有無についての判断は容易になったが、相対取り引きで、どこを契約地とするか任意である場合、議会が立法時に法の適用範囲を明確に知りうる、という目的までは達成されていないと思われる。

また、教授は、証券は米国証券取引所のリストに掲載されていないが、ADRs (American Depository Receipts) がリストに掲載されていたときは、Morrison 判決の基準では米国証券取引法の適用があるか、とも質問されている。
これもリスト掲載の要件を満たしているので、適用されると思われるが、最高裁判決前の実務では、ADRs の取り引きは、いくつかの裁判所によって、証券はdomestic ではなく "more foreign" として扱われ、conduct test またはeffect test によって適用の有無が判断されていたとされる 。(Christina M. Corcoran, The Post- Morrison Challenge, 26 New York International L. Rev. 77, 86 (2013))

なお、2010年 Dodd-Frank Act で、米国議会はSecurity Exchange Act を修正し、SECに、外国人のみが関与する外国で行われた証券取り引きであっても、違反につながる重要な行為の段階が米国内で行われていたとき、または、外国で行われた行為が米国内に影響をもたらすことが予測されるときは、アクションを起こすことができる権限を付与した、とのことである。