2013年12月5日木曜日

経営者保証に関するガイドラインが公表されました

国際取引とは直接の関係はありませんが、 


平成25年12月5日、経営者保証に関するガイドライン研究会により、「経営者保証に関するガイドライン」が公表されました。
http://www.zenginkyo.or.jp/news/2013/12/05140000.html

本ガイドラインは、中小企業に対する金融資産を有する金融機関等を対象債権者とし、(1)保証契約の主たる債務者が中小企業 (2)保証人が個人であり、主たる債務者である中小企業の経営者であること (3)主たる債務者と保証人の双方が弁済に誠実であり、財産状況等を適時適切に開示していること (4)主たる債務者及び保証人が反社会的勢力でないこと、といった要件を満たしている場合に適用されます。

ガイドラインが適用されると
1 保証金額は、形式的に保証金額を融資額と同額とせず、保証人の資産、主たる債務者の信用状況等を総合的に勘案して設定する。
2 保証の履行請求は、期限の利益を喪失した日等の一定の基準日における保証人の資産の範囲内とする
  または
  保証人の債務整理を支援する専門家の確認を受けた場合に、保証の履行請求額を履行請求時の保証人の資産の範囲内とする
  といった対応を誠実に実施する旨を保証契約に規定する
3 既存の保証契約の適切な見直しを申し入れに対し、対象債権者は、真摯かつ柔軟に検討を行い、検討結果について主たる債務者及び保証人に対して丁寧かつ具体的に説明する
4 保証債務の整理の手続きが適用される
5 保証債務の整理において、保証人の手元に一定の資産を残すことができる

といったメリットを受けることができます。
ただし、保証債務の整理の手続きに必要な機関の受け皿が、現時点では、特定調停くらいしかない、という問題があります。

このガイドラインは、平成26年2月1日から適用となり、保証債務の履行前であれば、契約日が平成26年2月1日以前であっても適用されます。

2013年12月4日水曜日

ベトナム工場(ロンドウック工業団地)の話しは乗るべきか?

11月2日に開催された「関西を元気にする国際フォーラム」で、近畿経済産業局通商部国際事業課の担当者が、近畿地域の中小企業の海外展開支援業務について説明をした。
その説明によれば、近畿経済産業局とベトナムドンナイ省とが、ドンナイ省において、関西の裾野産業が集積するモデル事業を推進するために双方で協力を行う、具体的には、関西の中小企業がロンドウック工業団地への進出のサポートをする、とのこと。日系企業が現地で抱えるビジネス課題の解決を図る「ドンナイ省関西デスク」も設置されたとのことだった。
要するに政府が、関西の中小企業がベトナムに工場を作るのを支援するというものだ。

ベトナムは中国と比べても人件費が安いと言われている(実際にデータもある)。

さてこの企画、近畿経済産業局の話しを聞いていると、よいことのように聞こえるのだが、本当にそうだろうか。先日の瀧本哲史先生が講演で言われたことととあわせて考えてみよう。

瀧本先生の話しには、
日本企業のアジア進出の多くは失敗に終わっている。
P社がマレーシアに工場を移転させたため、P社と取引きをしていた関西の中小企業は仕事がなくなった。
関西の中小企業が海外に移転すると、大阪から産業が減り、大阪の空洞化が促進される。
という情報が含まれていた。

これらを総合して考えると、近畿経済産業局がいたれりつくせりで関西の中小企業にベトナムの工業団地に工場を作らせるのは、P社の移転で仕事がなくなった大阪の中小企業の問題をベトナム工場の提案をすることで当面の解決とする、一方、ベトナム工場が事業として成功するかどうかはかなり怪しい、さらに中小企業が出て行った後の関西経済はさらに落ち込む、ということになる。
これは、「関西を元気にする」事業か?

ただし、海外進出が必ず失敗するというわけでもない。瀧本先生の講演から成功するための要因を拾うと、事前に調査し、計画をたて、契約交渉をきちんとし、事業の終わらせ方を契約前に考え、事業がうまくいかなかったときの手当をしておく、ということになる。

瀧本先生曰く、
「授業料と思って」という社長が多いが、不必要な「授業料」は払う必要がない、事前にちゃんとした専門家に相談しよう。

また、こうも仰っていた。「流行だから、同業他社が行くから、という理由で行くと失敗します。」

行くか、行かないか、むつかしい経営判断だ。信頼のおける相談相手となる専門家をまず見つけることか。

2013年12月3日火曜日

瀧本哲史准教授講演「企業の海外進出 専門家としてアドバイスすべきこと」

京都大学の瀧本徹史准教授の講演を聞きに行ってきた。同准教授によれば、講演は引き受けないことにしている、効率の悪いビジネスだから、ただし例外がある、マイノリティグループに頼まれたときは引き受ける、世界を変えるのはマイノリティだからだそうだ。「関西」の「女性」士業の主催の会。そこまで期待されているのに、講演について講演に関する記事を書かないわけにはいかない。

講演のテーマは「企業の海外進出 専門家としてアドバイスすべきこと」

エピソード1

京大で学生が床に座って聞く、著書はベストセラーとの評判どおり、密度が非常に濃く、かつ面白い。とても1回の記事で書ききれる内容ではないので、講演で触れられたエピソード一つについて

日本の企業のアジア進出がどういうものかは、1950年代にアメリカの企業が、「日本」に進出しようとしたら、というのを想像してみたらいい。日本人なら、無理だとわかるだろう。日本ではビジネスについて規制が細かく、日本社会の事情に通じていないアメリカ人が日本に進出して成功するとは思えなかっただろう今、日本企業がアジアに進出するというのはそれと同じだ。アジアへの進出は、アメリカへの進出とは環境が違う。アジアではアメリカでは起こりえないことが起こる。

おそらく多くのアメリカ企業が、高度成長と聞いて日本進出を試み、損失を出しだろう。しかし、その中でもいくつか成功した企業がある。
New Yorkの街で多く見かけるフランチャイズは、スターバックスとサブウエイだ。いずれも日本に進出している。スターバックスは多数の店舗を展開して成功し、サブウエイの店舗は少なく、フランチャイズ事業として成功していない。この違いはどこに由来するのか?スターバックスと提携日本企業の契約書の中には、一定期間内に一定数の店舗を出店することとの違約金付きの条項があり、サブウエイと提携日本企業との間には同様の契約条項が入っていない。提携日本企業の法務がしっかりしており、また契約にあたって自己の言い分を通すだけの力を持っていたために、そのような内容の契約になったのだろう。

以下感想。

契約条項は自己に有利だが、事業としては失敗。

このエピソードを聞いて、弁護士としてそれではどういうアドバイスをすればよいのか考えてみた。
「この条項は、一見不利だが、事業の成功のために入れておいた方がよい」は「弁護士」として正しいアドバイスか

契約書顧問弁護士の事務所に添付メールで送り、この契約書に自社に不利益な内容が含まれていないかチェックしろ、と書けば弁護士は、契約の中のクライアントが義務を負う条項にまずフラッグが立てるだろう。そして、不利益な項目をチェックしろと言われた弁護士は、ビジネスの状況によっては出店できない可能性があるので、この条項ははずしておいた方がいい、というアドバイスをするだろう。

仮にフランチャイズというものは、一定期間内に一定数の店舗の展開をして知名度を上げなければ事業として成功しない、ということを会社が弁護士に説明をしていたらアドバイスは違っていただろうか?やはり、違約金のついた義務条項は、交渉の力関係で排除できるのであれば排除しておきたい。排除した上で、企業が事業センスとして自発的に当初赤字でも店舗展開をすればよい、と言うのではないだろうか?

ここは専門家のアドバイスとひとくくりにできない、投資アドバイザーと弁護士の役割の違いか。
専門家としてアドバイスすべきこと、というテーマだが、このエピソードから、どういう教訓を引き出すのか、悩ましいところである。

2013年11月1日金曜日

グレーマーケット(著作権、2013年1月米国最高裁判決)

ハノイで行われたNYSBAのseasonal meeting のsession で著作権のグレーマーケットに関する2013年1月の最高裁判決が紹介されていました。

著作権者は、ファーストセールが外国でなされたとしても、そのファーストセール後は、著作物に関し、いかなるコントロールも行使することはできない。
Kirtsaeng v. John Wiley & Sons, Inc., __  U.S.__, No. 11__ 697 (March 19, 2013)

L'ANZA 判決は、米国から外国に輸出されたラベルをつけた商品の輸入事案でしたので、最初の販売が外国でなされた場合にも著作権者が著作権にもとづいて輸入を止められるのか、という問題がありましたが、この判決でこの問題に決着がついてようです。

Seasonal Meetin of International Section of NYSBA in Hanoi, Viet Nam

10月23日から26日にかけてハノイ(ベトナム)で開催された New York State Bar Association のInternational Section  の seasonal meeting に参加してきました。

初めての参加でしたので、様子がわからず少し不安でしたが、初日のセッション1の前に東京から来られた山田篤先生(ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所)とお会することができました。その後、すぐに大槻智行先生(日本アイ・ビー・エム株式会社)ともお会いし、この大会の常連のお二人の先生方からいろいろ教していただき、楽しく過ごすことができました。

この大会の講義を受講するとCLEの単位がもらえます。が、各講義の内容はとても充実していますので、CLEの単位のため、というより、興味津津で、事前登録していない講義にも参加してしまいました。


東南アジアに関する法律問題だけでなく、世界中の弁護士が参加している強みをいかして、米国、南米、欧州の法律に関する講義、さらに同じテーマでそれぞれどのように規制が異なるかを示したものなどがあり、これだけの人材を一箇所に集めて同時進行で多くのセッションを展開する企画にNew York の底力を感じました。

ベトナムには若い世代が多く、中学校から英語教育をしているとのことで、英語を話す人も多くいました。
アメリカに留学している人数は、8番目にとのことで、国の大きさ、人口、経済状態を考えると、驚くほど多いと思いました。

この国の高い発展の可能性を感じた旅でした。



来年の大会はウィーンで開催とのことです。




2013年9月18日水曜日

ハーグ条約案件(監護権の調査)

国境を越える子の連れ去り事案(ハーグ条約事案)について大阪弁護士会のハーグPTと大阪家庭裁判所との合同勉強会が続いている。
監護権を侵害する連れ去りが条約の対象となっているのだが、その関係で申立人の監護権が侵害されたことが要件の一つとなっている。

申立人の監護権の有無は、申立人が子に対して監護権を行使していたと主張する地の国際私法によって定まる準拠法によって定められる。

そのため、アメリカ人が申立人である場合、監護権を行使していた州の国際私法(法選択規則)で、監護権についてどの法を指定しているかをまず調べ、次に、法選択規則によって指定された法の内容を調べることになる。

ここまで議論が進んだとき、誰が州の法選択規則とそれによって指定される法の内容を調べるのか、という問題にいきあったった。
家庭裁判所側は、強行に、それは申立人(の代理人)の仕事だと主張する。
申立人は、自分の居住している地の法律だから知っているだろう、とも言われる。
本当だろうか?日本人で、外国籍の配偶者がいたとしても、日本の国際私法ルールを知っている人がどれだけいるだろう?

弁護士側は、ハーグ案件に関し、裁判所間に国際ネットワークが構築されており、裁判官同士のメールのやりとり等で法律に関する情報交換が可能となるシステムがあると聞いているのだが、この情報は裁判所に入っていないのか、使いたくないのか、情報が誤りなのか?

申立人が、地元の弁護士と日本の弁護士の両方を使っていれば、日米の弁護士間で法律、事実の情報交換をすることは容易なのだが、地元の弁護士が必ずついているという保証がない。
費用をかけることができるなら、地元の弁護士に相談すれば、正確な情報を早く入手することができるが、申立人に費用の支払いができないときにどうするか、という問題が発生してしまう。


2013年7月31日水曜日

国際仲裁廷 ソウル、ニューヨーク 2013

2013年Seoul に International Dispute Resolution Center がオープンしたと思ったら7月にはNew York に New York International Arbitration Center がオープンした。
http://nyiac.org/

自国に Interantional Arbitration Center を作るメリットは何か?
韓国の弁護士の説明によれば、韓国企業が国際仲裁を使うことが多く、また国際仲裁に多額の費用を払っている、仲裁センターを韓国に持つメリットはある、とのことだった。

日本にも国際商事仲裁協会というのはあるし、内田貴先生は民法(債権法)改正について、日本法が国際契約の準拠法に選ばれ易くする、日本法が国際仲裁で準拠法になったときに使い勝手がよいか、という視点から説明されることがある。

仲裁は、早い、安い、非公開、その分野の専門家を仲裁人に指定できる、というメリットが挙げられることがあるが、少なくとも安いということはまずないと言われており、早い、というのもどこと比べるかだが(インドやイタリアは裁判が長いことで有名)、さほど早くもないと言われている(ただし上訴はない)。非公開にしても執行段階で裁判所を通すと公開になることが指摘されている。

なお、そもそもすんなり仲裁が始まるか、手続きでもめないか、については仲裁合意をする時点で慎重に起案をしておく必要がある。

それはともかく、仲裁センターを持ちたがるというのは、仲裁には金がかかり、その金はどこかに行くのだから、自国に落ちるようにしたい、ということではないのだろうか。
それでは日本にも作れば、ということになるのだが、英語を母国語としない者にとって国際仲裁に代理人、仲裁人として関与するのはハードルが高い。

それでは韓国はどうしているのか。
韓国人の友人によれば、韓国人は世界各地に移民しており、英語を母国語とする韓国人(現国籍はともかく)が多い。韓国の法律事務所は韓国系米国人弁護士を雇用して国際仲裁にあたらせることができる、とのことだった。

さて、日本はこの分野にどう対応し、日本の弁護士はどうやって生き残ればよいのだろうか?


2013年5月3日金曜日

IPBA 2013 ソウル大会に出席しました

4月17日から20日にかけてソウルで開かれたInter Pacific Bar Association (IPBA) の第23回大会に行ってきました。

環太平洋ということなので、アジア、オーストラリア、北米からの参加をイメージしていましたが、実際に行ってみると、インド、イスラエル、南米、欧州、とほとんど世界中から弁護士が集まって来たという感じでした。参加者は1200名を越えたそうです。

IPBAに参加するのは初めてで、当初は様子がわからなかったのですが、周囲を見ると、レセプション、昼食、コーヒーブレイク、ディナー、あらゆる機会をとらえて、名刺を交換し、話をしているので、私もそれを見習うことにしました。アピール力、コミュニケーションスキル等、もっと練習をしなければということがわかりました。
韓国の弁護士は留学している人が多いと聞いていましたが、英語だけでなく、日本語を流暢に話す人も多く、国際的に展開している事務所とはこういうものか、と感心しました。

会議は、複数の委員会の報告が別の部屋で同時進行でした。
国際仲裁委員会を中心に報告を聞いていました。内容も面白かったのですが、報告者の国籍、事務所所在地もさまざまで、報告や質問にお国柄がしのばれることもあり、とてもエキサイティングでした。

女性と仲裁というテーマでは、女性の裁判官比率と仲裁人(arbitrator) の比率を比較し、女性が仲裁人に選ばれていない理由や選任のあり方について真っ向から対立する意見の2つのグループに分かれて議論していた企画があり、一面的な議論でないのが面白いと思いました。
終了後、報告者の一人に、あなたの議論に勇気づけられた、と挨拶に行くと、イギリス社会で女性が弁護士として働くのも大変、と言われ、マーガレット・サッチャーの映画の1シーンを思い出し、大変だろうなあと思いました。
同じく報告者をしていたインドの女性弁護士が着ていた白いサリーが美しく優雅だったのも印象的でした。

建築紛争仲裁事例検討会では、仲裁合意、仲裁手続き等の注意点について報告がなされていると、アメリカの弁護士から、こういう紛争は仲裁より調停(mediation)の方がよい、magic hourに調停をしてうまくいけば、双方の関係が深まり、将来のビジネスに有益である、という発言がありました。調停を日本的な解決だと思っていたので、この発言はちょっとした衝撃でした。別のアメリカの弁護士も、アメリカではこのようなケースは調停にする、と言っていたので、話し合いで、双方丸くおさめる、というのは、日本的、というより、理想的な解決なのだと思いました。

その他、APEC特別委員会報告で、中小企業の支援が世界経済にとっても重要である、として中小企業が国際取引にのりだすための支援案の報告がなされていたのも面白いと思いました。

外へ出て、人と会う、というのは本当に刺激的です。

IPBA 2013の内容について、大阪弁護士会の国際取引法研究会で9月に数名で手分けして報告をする予定です。



2013年4月10日水曜日

Morrison 判決勉強会

昨日の勉強会ではMorrison 最高裁判決をとりあげた。
判決文だけ読んでいても、何かもやもやした感じだったのだが、Professor Dodgeがこの判決に関して設定した設問を考えているうちに、輪郭がつかめてきた気がする。

最高裁はtransaction testと言っているが、その内容として、米国内での売買、または、米国の証券取引所のリストに掲載されている証券の売買 (whether the purchase or sale is made in the United States, or involves a security listed on a domestic exchange) としている。

Professor Dodge の設問は、米国の会社がドイツの会社を合併するためにドイツで契約し、クロージングのみ米国内で行ったが、ドイツの会社の資産内容の開示に虚偽があった場合、10bは適用されるか、契約地は重要か、というもの。

売買の対象となっている株式はドイツで発行されており、米国証券取引所で取り引きされていない。
最高裁判決前であれば、conduct test とeffect testによって、行為地が米国内か、効果が米国内に及んでいるか、を検討して米国証券取引法の適用の可否が判断されたはずであるが、Morrison判決に従うと、売買地が米国内であるか、または、売買の対象が米国証券取引所のリストに掲載されているか、で適用が判断される。
適用の有無についての判断は容易になったが、相対取り引きで、どこを契約地とするか任意である場合、議会が立法時に法の適用範囲を明確に知りうる、という目的までは達成されていないと思われる。

また、教授は、証券は米国証券取引所のリストに掲載されていないが、ADRs (American Depository Receipts) がリストに掲載されていたときは、Morrison 判決の基準では米国証券取引法の適用があるか、とも質問されている。
これもリスト掲載の要件を満たしているので、適用されると思われるが、最高裁判決前の実務では、ADRs の取り引きは、いくつかの裁判所によって、証券はdomestic ではなく "more foreign" として扱われ、conduct test またはeffect test によって適用の有無が判断されていたとされる 。(Christina M. Corcoran, The Post- Morrison Challenge, 26 New York International L. Rev. 77, 86 (2013))

なお、2010年 Dodd-Frank Act で、米国議会はSecurity Exchange Act を修正し、SECに、外国人のみが関与する外国で行われた証券取り引きであっても、違反につながる重要な行為の段階が米国内で行われていたとき、または、外国で行われた行為が米国内に影響をもたらすことが予測されるときは、アクションを起こすことができる権限を付与した、とのことである。

2013年3月13日水曜日

sec 10b 2010年最高裁判決 transactions test

Section 10(b) の域外適用(米国連邦最高裁判決 2010年)
Morrison v. National Australia Bank

最高裁は、Exchange Actは、deceptionが発生した地を問題にしているのではなく、証券の売買が米国内でなされたかどうかに着目しているのだ、と述べ、米国で40年にわたって用いられてきたconduct test, effect test を排斥し、新たにtransactions test基準をたて、原告の訴えを退けた。(
Justice Scalia)

結論には同意するが、理由が異なるとの意見が付されている(Justice Stevens, with whom justice Ginsburg joins, concurring in the judgment)

2013年3月8日金曜日

ブラジルCISG加盟

3月4日、ブラジルがCISGに加盟しました。
発効は2014年4月1日になるとのことです。
http://www.un.org/Docs/journal/En/20130305e.pdf

2013年3月7日木曜日

New York Convention と憲法98条2項

本日開催された「アジア諸国における外国仲裁判断の承認と執行」セミナーにおいて、渡邉惺教授が、日本では条約優位説がとられているが、これは条約が国家間の義務を定めていたときのものであり、今日のように、条約が直接個人の権利義務を定める場合には、条約優位説ではなく、手続法が実体法か、条約と法律との先後関係などを考慮して条約と法律のいずれが優先するのかを決するべきではないか、との意見を出された。
 また、同教授は、New York Conventionの解釈にずれがあり、仲裁判断が承認・執行されない国との間では、政府は二国間条約を締結して問題を解決すべきである、との意見も出された。

 日本の法学部の憲法の授業で、条約と法律が矛盾した場合、条約が優先すると習っており、これが世界中どこでもそうだと信じていたため、米国の国際取引法の授業で、条約と連邦法とが矛盾するときには、後法が優先する(州法は連邦が締結した条約に劣後する)と聞いたときには本当に驚いた。あまりに驚いたので、友人のドイツ人弁護士に、アメリカ人はこんなことを言っていると言うと、当然だ、ドイツでもそうだ、と言われ、さらに驚いた。一方的に法律で条約を破棄した場合、相手国との関係はどうするのか、と尋ねたら、それは別の問題だとのことだった。

 もともとの問題提起は、インドネシアでは、New York Conventionの要件に加え、仲裁人がインドネシア裁判所に仲裁判断の登録をしなければ承認執行の申し立てができない、また、仲裁地国のインドネシア大使館が発行するインドネシアと当該国の間に承認と執行の条約が存在することの証明書が必要、となっているがおかしいのではないか、というものだった。

 なお、インドネシアでは汚職がひどく、政府が取締りを強化したところ、裁判官に贈賄したという理由で最初の外国人逮捕者がでて、日本人だった、とのこと。

 さらに、UNCITRAL仲裁モデル法2006年改正では承認・執行に仲裁合意の原本を要求していないが、New York Conventionでは合意の原本が必要とされているため、原本を紛失している場合、もともとFax, e-mailでの合意であって、両当事者が署名した原本がない場合はどうするのか、という問題提起もなされていた。

2013年2月18日月曜日

外資規制

NYSBAのMLに外国人の投資に制限はあるのか、との質問を見て、日本法ではどうなっていたっけと検索すると保管振替機構が外国人所有保有制限銘柄の公表をしていた。
http://www.jasdec.com/reading/for_pubinfo.php

日航38.99%、日本電信電話24.02%、フジ26.5%、テレビ朝日12.88%

航空法の外資規制は議決権の3分の1では?
日航は議決権のない株式を外資に渡しているのだろうか?

2013年1月31日木曜日

アメリカ合衆国との間の租税条約改正

平成25年1月25日、条約改正議定書が署名されたとの広報。

条約の名称
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のため日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約

改正内容
1 投資所得の配当、利子への源泉地国免除の対象の拡大
   配当:持株割合 50%超 → 50%以上
       保有期間 12ヶ月以上 → 6ヶ月以上
   利子:原則10%、金融機関の受け取り利子免除 → 原則免除
2 仲裁制度の導入
  条約に適合しない課税に関する相互協議に関し、2年以内に解決されない場合、納税者からの要請にもとづき、第三者で構成される仲裁委員会の決定で解決する。
3 両国の税務当局の協力関係の強化
   相手国の租税の徴収の共助の対象を滞納租税債権一般に拡大

改正条約議定書は、両国間で批准書を交換した日に発効し、
  源泉徴収租税に関しては、発効後3ヶ月後の日の属する月の初日以後に支払われる額、
  その他の租税については発効した年の翌年の1月1日以後に開始する課税年度
に適用。

  50%超を50%以上にした意味ってなんだろう?
  単独で過半数となるときはアメリカで配当に源泉徴収をしない、としていたのを、単独では過半数にならなくてもよい、つまり支配権がなくても配当に源泉をしない、となる。
  それほどのメリットがあるのだろうか?いずれも相手に支配権を渡したくないので50%ずつでしか合意できないが、それではアメリカで源泉徴収されるから嫌だといって投資をしぶっていた人の背中を押す?
  
  日本とアメリカの租税当局の見解が一致しない事項について仲裁に付する。
  委員は両国の当局は、委員の任命等の事項についての期間と手続きについて書面によって合意する、となっている。(25条)
  誰が、どこで、どのような手続きで仲裁をするのか、興味深い。

2013年1月28日月曜日

SEC rule 10b-5 と insider trading の関係

次回の勉強会のテーマはM&A。
Transnational Business Problems のM&Aの章には、SEC rule 10b-5 insider tradingを規制するものだとされているのだが、同条を読んでもどこにそれが書かれているのかがわからない。

SEC rule 10b-5
It shall be unlawful for any person, directly or indirectly, by the use of any means or instrumentality of interstate commerce, or of the mails or of any facility of any national securities exchange,
(a) To employ any device, scheme, or artifice to defraud,
(b) To make any untrue statement of a material fact or to omit to state a material fact necessary in order to make the statements made, in the light of the circumstances under which they were made, not misleading, or
(c) To engage in any act, practice, or course of business which operates or would operate as a fraud or deceit upon any person,
in connection with the purchase or sale of any security.
 証券を売買するにあたり、(a) から(c)に掲げる詐欺的な手段を用いてはならないと書かれているとしか読めない。(a)device, scheme, (b)が重要事項についての虚偽表示、(c)が詐欺行為、で内部者が取引きすることについては直接書かれていないようなのだが?
 よくわからないのでSEC Rule 10b-5に関するwikiのサイトを見ると、insider tradingという項目があった。この解説によれば、10b-5insider tradingにどのようにして適用されるのかについては争いがあり、SECequal access theoryをとり、公開されていない重要情報を持つ者はそれを公開するか取引きを自制しなければならないと主張していたが、最高裁はこの論理を却下し、misappropriation theoryを採用したと書かれている。秘匿情報を取得した者は、開示の義務を負っており、開示するか取引きを自制しなければならない、というものらしい。
 いずれにしても内部情報を取得した者が証券取引をするには情報を公開するか取引を自制すべき、となるから結論は同じなのだが、どちらの理論をとるにしても規則の文言からはわかりづらい。