京都大学の瀧本徹史准教授の講演を聞きに行ってきた。同准教授によれば、講演は引き受けないことにしている、効率の悪いビジネスだから、ただし例外がある、マイノリティグループに頼まれたときは引き受ける、世界を変えるのはマイノリティだから、だそうだ。「関西」の「女性」士業の主催の会。そこまで期待されているのに、講演について講演に関する記事を書かないわけにはいかない。
講演のテーマは「企業の海外進出 専門家としてアドバイスすべきこと」
エピソード1
「京大で学生が床に座って聞く、著書はベストセラーとの評判どおり、密度が非常に濃く、かつ面白い。とても1回の記事で書ききれる内容ではないので、講演で触れられたエピソードの一つについて。
日本の企業のアジア進出がどういうものかは、1950年代にアメリカの企業が、「日本」に進出しようとしたら、というのを想像してみたらいい。日本人なら、無理だとわかるだろう。日本ではビジネスについて規制が細かく、日本社会の事情に通じていないアメリカ人が日本に進出して成功するとは思えなかっただろう。今、日本企業がアジアに進出するというのはそれと同じだ。アジアへの進出は、アメリカへの進出とは環境が違う。アジアではアメリカでは起こりえないことが起こる。
おそらく多くのアメリカ企業が、高度成長と聞いて日本進出を試み、損失を出しだろう。しかし、その中でもいくつか成功した企業がある。
New
Yorkの街で多く見かけるフランチャイズは、スターバックスとサブウエイだ。いずれも日本に進出している。スターバックスは多数の店舗を展開して成功し、サブウエイの店舗は少なく、フランチャイズ事業として成功していない。この違いはどこに由来するのか?スターバックスと提携日本企業の契約書の中には、一定期間内に一定数の店舗を出店することとの違約金付きの条項があり、サブウエイと提携日本企業との間には同様の契約条項が入っていない。提携日本企業の法務がしっかりしており、また契約にあたって自己の言い分を通すだけの力を持っていたために、そのような内容の契約になったのだろう。」
以下感想。
契約条項は自己に有利だが、事業としては失敗。
このエピソードを聞いて、弁護士としてそれではどういうアドバイスをすればよいのか考えてみた。
「この条項は、一見不利だが、事業の成功のために入れておいた方がよい」は「弁護士」として正しいアドバイスか?
契約書を顧問弁護士の事務所に添付メールで送り、この契約書に自社に不利益な内容が含まれていないかチェックしろ、と書けば、弁護士は、契約の中のクライアントが義務を負う条項にまずフラッグが立てるだろう。そして、不利益な項目をチェックしろと言われた弁護士は、ビジネスの状況によっては出店できない可能性があるので、この条項ははずしておいた方がいい、というアドバイスをするだろう。
仮にフランチャイズというものは、一定期間内に一定数の店舗の展開をして知名度を上げなければ事業として成功しない、ということを会社が弁護士に説明をしていたらアドバイスは違っていただろうか?やはり、違約金のついた義務条項は、交渉の力関係で排除できるのであれば排除しておきたい。排除した上で、企業が事業センスとして自発的に当初赤字でも店舗展開をすればよい、と言うのではないだろうか?
ここは専門家のアドバイスとひとくくりにできない、投資アドバイザーと弁護士の役割の違いか。
専門家としてアドバイスすべきこと、というテーマだが、このエピソードから、どういう教訓を引き出すのか、悩ましいところである。
0 件のコメント:
コメントを投稿