昨日、スタートアップのエクイティファイナンスは半額を超える自己資金が必要なのではと記載しましたが、森弁護士の解説を思い返すと、種類株式、議決権のない株式、を発行して資金調達をしていらっしゃるのだと思いました。
森弁護士はまた、デットファイナンスをしない理由として、利息制限法をあげていらっしゃいました。10社に1社程度の割合でしか上場しないので、利息制限法に基づく利息では、リスクをとれないという理由です。
塚田氏の説明にあったスタンフォード方式(5対3で出資。起業家が5、資金提供者が3。3の出資をした資金提供者が会社のスタートに必要な資金を貸し付ける)とのメリットデメリットを考えてみました。
資金提供者から見れば、貸付金方式は会社が成功しても一定の利率の利息しか受け取れない、かつ、会社がつぶれたら貸した資金は回収できない。種類株式方式なら、会社が大きく成長したら出した金が何百倍にもなる可能性がある。会社が失敗したら回収できないのは貸付と同じ。
5対3プラス貸付方式なら、名目的な額で8分の3の株式を持った上での貸付なので、会社が大きく成長したときには、株式の価値は会社の成長に応じて上がるうえ、貸した資金は(わずかとはいえ)利息をつけて戻ってくる。会社が失敗したら回収できないのは同じ。
起業家からすれば、種類株式方式は、種類株のデザインとそれを書面に落とし込んだ契約書等のペーパーワークが必要で、時間と金がかかる。
5対3だと議決権の8分の3は他人が持つことになり、過半数(8の過半数は4を少し超える)は起業家が持つが、3分の2には足りない(8の3分の2は5を少し超える)。
他方出資者からすれば、起業家の持分が過半数かつ3分の2弱ということで、運営の迅速な意思決定は妨げないが、3分の2の議決が必要な重要な事項については企業家に単独でされないという安心感がある。
さらに言えば、出資者はスタートアップにランダムに出資するわけではないから、おそらく、出資金が返済される確率は10分の1以上では。
このように見ると、スタンフォード方式はよく考えられた合理的なスキームに見えますね。
ただ、スタートアップ法務専門の森弁護士からすれば、机上の空論と言われそうです。
どこが、と言えば、日本にスタートアップに投資する投資家が少なく、米国とは土壌が違う、スタンフォード方式で出資してくれる人を見つけるのが困難、ということではないかと思います。
亡くなられた瀧本先生がエンジェル投資家でいらっしゃったのを思い出しました。
企業の価値と将来性を見る目と資金を持った人がたくさんいることが、起業家にさまざまな挑戦をすることを認める社会の基盤である、というなんだか言い古されたフレーズに行き着いてしまいました。