2015年7月24日金曜日

アップルミュージックは独占禁止法に違反するか?

アップルが定額制の音楽配信が、反トラスト法に違反しないか米国の議員がFTCに調査の要請をしたということがニュースになっている。

日本では、2015年4月28日に最高裁で、JASRACの定額制の使用料規定が独占禁止法に違反するとの判決が出されているので、この判決が参考になるだろう。

最高裁判決の理由は以下のようなものである。
 参加人(ジャスラッック)の年間の包括許諾による利用許諾契約によれば、使用料は包括徴収によることとされ、当該年度の前年度における放送事業収入に所定の率を乗じて得られる金額を当該年度の放送使用料とする、とされている。
 本件で問題とされた行為は、包括徴収による利用許諾契約を締結し、これに基づく放送使用料の徴収行為(本件行為)である。
 
 本件の市場は、放送事業者による管理楽曲の放送利用にかかる利用許諾に関する市場(本件市場)、である。

 平成13年10月の著作権等管理事業法の施行に伴い、文化庁長官の登録を受けた業者は被上告人を含む4社である。

 平成18年10月に被上告人が参入するまでは、本件市場において放送使用料の収入を得て事業を行っていた管理事業者は、参加人のみであった。

 独占禁止法2条5項の「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当するか否かの判断基準は以下のようなものである。
  自らの市場支配力の形成、維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するもの
   かつ
  他の管理事業者の本件市場への参入を著しく困難にするなどの効果を有するもの
 
 判断要素(総合的に考慮)
   本件市場を含む音楽著作権管理事業に係る市場の状況
   参加人及び他の管理事業者の上記市場における地位及び競争条件の差異
   放送利用における音楽著作物の特性
   本件行為の態様は継続期間等の諸要素

 事実認定
  1 平成13年10月の時点で、管理、委託及び利用許諾の各市場は参加人による事実上の独占状態だった。
  2 管理楽曲に係る利用許諾、不正利用の監視、使用料の徴収、分配を行うには多額の費用を要するため、他の管理事業者による各市場への参入は相応の困難を伴う。
  3 大部分の音楽著作権について管理の委託を受けている参加人との間で包括許諾契約を締結することなく、他の管理事業者との間でのみ利用許諾契約を締結することは想定し難い。
  4 放送番組の楽曲選択は、基本的に代替的な性格を有している。(複数の楽曲の中から選択されるのが通常である)
  5 放送使用料の金額の算定に管理楽曲の放送利用割合が反映される余地がなく、他の管理事業者の管理楽曲を有料で使用する場合は、追加の放送使用料の負担が生ずることとなる。

以上により、最高裁は、JASRACの包括契約が、他の管理事業者の本件市場への参加を著しく困難にする効果を有する、とした。

さて、アップルミュージックはこの判決の理由にあてはまるのか?
  検討にあたり、
   市場は、個人に対する音楽配信市場とする。
   行為は、定額制で無制限の音楽配信契約とする。
  
  2015年7月時点で、個人に対する音楽配信事業はほぼ独占されていたか?(あるいは、現時点でほぼ独占されているのか?)
  新規参入は困難か?
  音楽著作権のうち、大部分を管理しているか?
  楽曲選択は代替的か(事業ではなく、個人なので、事業より好みが反映されるはず)
  利用割合は反映されず、他の管理事業者の楽曲を使用するときは追加の負担が生じることは本判決と同じ。

 このように比較すると、個人に対する配信事業は、管理する音楽著作権の割合、とりわけ人気の高い音楽著作権を管理する割合で、結論が分かれそうだ。
  



 


2015年7月17日金曜日

会計処理条項違反罰則(FCPA)

先日「危機的状況下の企業の防衛」-Dealing with Companies in Crisis- のセミナーを聞きに行ったとき、FCPA(米国外国公務員贈賄防止法 Foreign Corrupt Practice Act)には贈賄禁止条項違反の規定だけでなく、会計処理条項違反の規定があり、形式犯である会計処理条項違反の罰則の方が重い、という説明があった(村上康聡弁護士)。

どのくらい重いかというと(村上弁護士のレジュメから引用)

賄賂禁止条項違反は
自然人 
  5年以下の拘禁
 または/及び  
  25万ドル以下 または 
  犯罪行為によって得た利益 もしくは 受けた損失の2倍以下の罰金
法人
  200万ドル以下 または
  犯罪行為によって得た利益 もしくは 受けた損失の2倍以下の罰金

会計処理条項違反
自然人 
  20年以下の拘禁
 または/及び
  500万ドル以下 または
  犯罪行為によって得た利益 もしくは 受けた損失の2倍以下の罰金
法人  
  2500万ドル以下 または
  犯罪行為によって得た利益 もしくは 受けた損失の2倍以下の罰金

罰金の上限の差を見ると、おそらく賄賂による利益より、違法会計による利益の方が10倍以上大きく、かつ、賄賂よりも社会に及ぼす影響が大きいのだろうと推測される。あるいは賄賂よりも、違法会計処理の方が簡単で、誘惑が大きいのかもしれない。

東芝の不正会計は結局合計でどのくらいになったのだろうか?1500億円?2000億円?
1ドル120円で換算すると法人の罰金額の上限2500万ドルは30億円。

     
    


2015年7月16日木曜日

ルピア使用の義務付け(インドネシア)

インドネシア中央銀行が2015年7月1日から国内取引にルピア使用を義務付けたとの記事

https://www.jetro.go.jp/biznews/2015/07/f95e7aa92f59a648.html

ルピアの為替レート安定を目的とするものとの解説がなされている。
ルピアの需要を高めると同時にドル需要を抑えることで、ルピアが下がるのを止めるということらしい。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OP23Z20150609

「主権を守る意味合いがある」とのコメントがなされている。

我が国ではどうなっているかというと、
民法403条 外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済することができる
とされている。

文言上国内取引に限定されていないし、「履行地における為替相場」となっているから、外国が履行地であっても、日本の通貨で弁済ができるように読める。
国家主権、国内における通貨の強制通用力というのが背景にあるなら、国内取引に限定されていなければならないはずだから、理由は別にあるのだろう。

402条1項但し書きには、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない、として、他の種類の通貨での弁済を認めず、3項で、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合に1項を準用するとされている。

このことから、契約で、外国の通貨での給付が義務づけられていれば、指定された外国の通貨で給付しなければならず、403条は、外国の通貨で額を指定しているが、外国の通貨で給付をすることまで規定していない場合に、日本の通貨で支払うことができる、と読むことになるのだろう。

そうすると、契約において、支払額をドルで指定しただけだと、円で支払がなされるのを拒絶できず、ドルでの支払いを確実にしようとすれば、支払額をドルで指定したうえ、ドルで給付する、としておく必要がある。

403条の文言は、「債務者は」となっているので、外国通貨で払うか、内国通貨で払うかの選択ができるのは債務者のはずだが、昭和50年の最高裁判決は、債権者は、外国通貨、内国通貨いずれによっても請求することができ、債権者が外国通貨で請求したときのみ、債務者は内国通貨で支払うことの選択ができ、債権者が内国通貨で請求したときには外国通貨での支払いができない、とした。

また、403条には換算の基準時という論点もある。

さて、インドネシア。
インドネシア国内で買い付けを行う輸出業者はルピアを準備する必要があり、また、進出企業がインドネシアで営業所の賃料を払うにもルピアを準備する必要がある。
為替変動が大きいと、ルピアで資産を保持するのもリスクだし、支払いにあたりいつ換算するかで価格が動きやすい。

それではドル決済を認めた場合、どうなるだろうか?
国内取引きでドルがルピアと並んで流通し、ドルの流通量がかなりの割合を占めると、中央銀行の金融政策はルピアにしか及ばないので、ほとんど効果がなくなるおそれがある。
ルピアの流通量をコントロールしても、国内にはコントロールの及ばない別の通貨が流通しているからである。

ここまで書いて、ギリシアはどうするのだろうと思っていたら、こんな記事が出ていました。
ギリシア、一時的なユーロ圏離脱のほうが適切

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PQ0EG20150716

ユーロ圏を離脱すれば、ドラクマに戻り、ドラクマが安くなれば、輸出(あるいは観光産業)が好調となり、経済状態がよくなると期待できるのでは?

2015年6月29日月曜日

ユニクロ下請け工場の労働環境報告書(CSR)

大学のとき、法哲学の松浦教授が、私たちは、自分が使っている鉛筆でさえどのようにして作られているか知らない、とおっしゃった。
そのときは単なる観念的、思考実験的な話だと思った。

ヒューマンライツナウの、香港のSACOMと共同作成した中国国内ユニクロ下請け工場における労働環境調査報告書に関する講演を聞いたとき、身の回りの物でさえどのようにして作られているか知らない、ということが何を意味するのかが少しわかった気がした。

報告されているのは、長時間にわたる過重労働、法律どおりに支払われない時間外給与、工場内の異常に高い気温、危険な設備、綿ぼこりが舞う換気されない作業場、適切に管理されていない有毒化学物質、代表を持たない労働者、といった「低価格で高品質なカジュアルウエア」の製造現場だった。
「服でよりよい人生を、誰にでも、いつでも」の哲学を掲げ「ビジネスを通じて世界中の人々の生活をより豊かに」することを最大のミッションとしている企業との紹介が製造現場の異常さを際立たせている。

会場からは、なぜファーストリテイリングにばかり改善要求をするのか、間に入っている日本の商社の方がよほど大企業だろう、とか、労働環境に責任を負っているのは中国工場の中国経営者だろう、という質問がだされる。
異なる法人格のする行為に責任はない、という主張であり、法律的には正しい。しかし、問われているのは企業の社会的責任であり、下請け工場の劣悪な労働環境が報告されることで傷つくのは企業のブランドイメージである。

報告を支えているのは、国連のRuggie原則。経営陣が世界の流れを知らずに、「法的には責任がない」という主張を繰り返せば、会社に思わぬ損害を与える可能性があり、対応を誤ったことが過失とされるおそれがある。

http://www.ohchr.org/Documents/Publications/GuidingPrinciplesBusinessHR_EN.pdf

http://www.unic.or.jp/texts_audiovisual/resolutions_reports/hr_council/ga_regular_session/3404/


報告者の中島先生によれば、ファーストリテイリングは勧告に対し、当初速やかに対応した、今後の推移を見守りたい、とのことだった。
また、労働者からの聞き取りによれば、買い取りブランドが視察に来るときには、決められた防護服を着るよう命じられている、来訪にあわせて掃除をする、とも書いてあるので、下請け工場の視察を頻繁にしていても、問題発見は簡単ではないのかもしれない。

先日梅田の阪急百貨店のアーバンヘルシーフェアで、フェアトレードのスカートを購入した。この商品を購入することはインド西部のスラム街の女性の援助につながるという説明書がついている。使われている染料には有毒化学物質は含まれていない、とも書いてある。

コーヒーもチョコレートもフェアトレード商品が販売されているのは知っている。が、そうでない同様の商品に比べてやや価格が高い。いつもフェアトレードを選択しているわけではない。

けれど、スカートが風にそよぐのを見てインドを想像し、世界に対してほんの少し正しいことをした気分になれるのは悪くないと思った。

この企画をしたデパートの担当者の時流に対する嗅覚には拍手を送りたい。

2015年6月12日金曜日

英文契約書(インコタームズ)

海外のメーカーから売買契約書を渡されたから見てほしいとの依頼。
今までから海外との取引経験はあるとのこと。

いくつかの条項について、この内容で合意してよいのか、とディスカッションしていたら、3つのアルファベットの組み合わせがいくつか並んでいる条項を見て「インコタームズって書いてあるけど、これは何?」

海外の会社と取り引きはしていても、契約書の文言はあまり気にしていらっしゃらなかったのだろう。

インコタームズは国際商工会議所が定めた貿易条件の定義で、3つのアルファベットの組み合わせで売主と買主のいずれが、輸送の費用や危険を負担するかを示している。

FOB(Free on Borad)と書いてあれば、売主の責任は商品が船の舷側を越えるまでで、そこから先の輸送費や輸送中の危険の負担は買主が負う。
 CIP (Carriage and Insurance Paid To)とあれば、売主が輸送費と輸送中の保険料を負担する。

米国のロースクールの国際取引の授業では、E  または F で始まるインコタームズは、輸送の費用と危険は買主の負担、C または D で始まるインコタームズは売主の責任、と習った。
略語から元の単語を思い出し、どちらが何を負担するのかを考えるという作業をする前に直感的にどちらが輸送に責任を持つのかを把握することができる。ちょっと知っておくと便利。






2015年6月9日火曜日

紛争鉱物と人権

米国における紛争鉱物に関する開示規制の立法趣旨(ドッドフランク法)は、コンゴ民主共和国の武装集団の資金源を断つこと、とされている。

紛争鉱物に関する開示が資金源を断つことにどのように役立つのだろう?

規制の概要を見ると、まず規制対象となる紛争鉱物は、コロンバイト・タンタライト。スズ、金、タングステン。

スズ、金、タングステンは聞いたことがある鉱物名だけど、コロンバイト・タンタライトというのは高校の授業でも聞いたことがない。
用途例を見ると、携帯電話、ジェットエンジン、カメラレンズ、インクジェットプリンター、PC、TVとなっている。日常生活のいたるところにありそう。

これらの鉱物を使用して製品を生産している企業は、原産国を調査をしなければならない。

調査の結果、産地がコンゴやその周辺ではない、か、再生利用品、スクラップ起源である場合はコンフリクト・フリーとなる。
再生品・スクラップ起源なら、もともとがコンゴでもかまわないらしい。というより、むしろそういったものの利用を促進することで武装勢力の資金源を断つことができるからだろう。1度は代金を払ってしまったものは仕方がないから、再利用して使うことで将来の資金源を断つという合理的な判断。

それでは、紛争地から武装勢力に金を払って買い付けてきた鉱物ならどうするのか?

紛争鉱物報告書に、製品、加工施設、原産国、採掘所または原産地を確定するための取り組みを記載すること、となっている。

企業の義務は報告書に書くだけ。紛争地から買い付けてきた鉱物を使用して製品を作ることにはなんら規制はない。

だだし、この報告書は、一般市民が入手できるようにしなければならない、とされている。
市民が不買運動などを通じて企業に圧力をかけることを期待するということだろうか?

米国国務長官が戦略を議会の委員会に提出する、ともされているが、戦略といっても、コンゴおよびその周辺国の領域内で産出されるされる鉱物の取引きであり、国際的な協力、平和維持活動を通じてということになるだろう。

武装勢力および人権侵害を支える商業活動をしている個人や企業に対して講じうる懲罰的措置の説明というのもあるので、米国の管轄権および法がどの範囲に及ぶのか、というのが興味深い。






2015年5月29日金曜日

海事事故と裁判管轄

昨日の国際取引の研究会で、報告者が Lotus 号(フランス)とBoz-Kourt号(トルコ)の衝突事故に関する1927年の常設国際司法裁判所の判断(沈没した船の船籍であるトルコの管轄を認めた)を紹介し、現在ではブラッセル条約により、旗国(または船長または船員の本国)が刑事管轄権を有する、そうでなければ、偶然の事情により要求される過失の程度が異なる、と解説をした。

それに対して、他のメンバーから、便宜置籍船が多いのではないか、リベリアの便宜置籍船の衝突事故の管轄はリベリアとしてよいのか?という疑問を投げかけた。
確かに便宜置籍船には船の運航と旗国との間にはほとんど関係がなさそうだ。

そもそも、海上交通において要求される注意義務の程度が国によって異なるというほど異なっているのだろうか?
海上を行き交う船が船籍によって注意義務の程度が異なっていたら、危ないのではないのか?

事故後トルコに寄港していたロータス号の船員に対して、寄港地であり、被害船の船籍国であるトルコに管轄を認めることは、それほどおかしなことなのだろうか?

ネットで検索すると、「国際海事条約における外国船籍に対する管轄枠組の変遷に関する研究」(国土交通省)が見つかった。
http://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk77.pdf

それによると、旗国主義の原則は維持しながら、便宜置籍化の進展や事故による海洋汚染等の環境変化を受けて、旗国主義を代替、補完する枠組を求める動きが見られ、排他的な旗国主義原則が後退していう過程にある、とされている。

海事は、法律がそれを取り巻く政治的、技術的な環境の変化にともなって変化することをダイナミックに示す分野なのだろう。
とても興味深い。



2015年5月28日木曜日

FIFA役員逮捕(続)

昨日ブログで、なぜFIFAの役員の収賄がアメリカで犯罪となるのか、適用法と容疑がわからない、と書いた。

本日、米国司法省(DOJ)のサイトのJUSTICE NEWSの広報を見て疑問は解決。
http://www.justice.gov/opa/pr/nine-fifa-officials-and-five-corporate-executives-indicted-racketeering-conspiracy-and

適用法は連邦法であるRICO、被疑事実は、ゆすり、不正送金、マネーロンダリング、司法妨害等。
http://en.wikipedia.org/wiki/Racketeer_Influenced_and_Corrupt_Organizations_Act

また、CONCACAFの本部は起訴された行為の期間、米国内にあった、とされている。

マフィアか暴力団みたいな組織だったという認識か。

なお検察官は、「起訴は我々の捜査の最終章ではない」と明言し、IRSは捜査を継続するとしている。

2015年5月27日水曜日

FIFA 役員が米国連邦汚職法違反でスイスで逮捕

FIFA の執行役員数名が会議のため滞在していたチューリッヒのホテルで逮捕され、米国に引き渡されるとのニュース。

http://www.nytimes.com/2015/05/27/sports/soccer/fifa-officials-face-corruption-charges-in-us.html?_r=0

過去20年以上にわたってワールドカップの入札、マーケッティング、放映権で汚職が広がっていたとされている。

この記事の解説によれば、スイスとアメリカの条約で、スイスは税金犯罪については引き渡し拒否権があるが、通常の犯罪についてはスイスはアメリカへの引き渡しに合意している、とされている。スイスが税金犯罪については引き渡しに応じないというのが面白い。

また、米国連邦法は、司法省に外国に居住する外国人の対する広い権限を与えており、米国銀行の使用、または米国のインターネットプロバイダー使用といった米国との関わりでも米国の管轄が及ぶ、と解説されているが、今回の容疑の多くは、Concacaf (Confederation of North, Central America and Caribbean Association Football) に関するものとも書かれているので、事件と北米との関係が銀行やプロバイダーの利用といったものより強いものがあるのかもしれない。
Concacafの代表者が2006年のワールドカップのチケット再販売による不法な利益をあげていたともされている。

ところで、FIFAは国際機関なのだが、政治家でも政治団体でもない。FIFAの役員が賄賂を受け取る行為は、米国の公務員が賄賂を受け取るのと同じに扱われるのだろうか?
FCPAは、外国公務員への贈賄を禁じており、「外国公務員」の定義には、public international organaizationの職員が含まれている。しかし、FCPAは贈賄を禁じる法律である。そうでなければ、米国会社が外国の公務員に贈賄をしたら、収賄した外国公務員まで米国の法廷で米国の法律で裁かれることになる。ロッキード社からの贈賄を日本の大臣が日本で受け取ったら米国の法廷で裁かれる、ということはないだろう。

適用法と容疑の関係がよくわからない。



2015年5月21日木曜日

汚職リスクのある会社の買収

Ligorner弁護士の講演(M&A取引における反汚職法のデューデリと解決法)で、デューデリ失敗事例としてTitan買収事案とRAEシステムのJV増資(中国)事案が挙げられ、成功事例としてGEとAlstomの事案が挙げられていた。

GE とAlstomの事案とはどのようなものだったのかと検索したところ、2014年12月の記事が見つかった。


フランスの会社であるAlstomの電力部門はグローバルに展開し利益を挙げており、GEが同社の電力部門を買収することになった。他方、Alstomの電力部門に関しては数年前から贈賄の噂があった。
2014年12月にAlstomは米国司法省に贈賄について有罪答弁をし、米国司法省史上最高額の罰金を払うことで合意をした。
GEがAlstomを買収しても、贈賄に関してGEが責任を承継しないことを司法省が明言し、GEは贈賄は買収にあたり織り込み済みでなんら問題はないと述べた。

となっている。

デューデリの過程で贈賄の事実を発見した場合、きちんと手当をし、会社のシステムを刷新し、贈賄による企業価値の毀損分を考慮して買収をすれば、過去に贈賄をした会社を買っても大丈夫、という例。


2015年5月19日火曜日

Ligorner弁護士(M&Aにおける汚職リスクの評価と対処について)

IPBA2015香港のプログラムの中に、M&A時における汚職リスクの評価と対処について(Anti-corruption Due Diligence and Solution in M&A transactions)、というセッションに出席しました。

昨年10月にNYSBAの国際委員会の会でウイーンに行ったとき、汚職防止に関する国連の取り組みなどの講演を聞き、その後米国のDodd-Frank法についての資料を読んだりしていたので、この分野には興味があります。

セッションはパネル形式で4人のパネリストが講演しましたが、その中で、Lesli Ligorner弁護士の講演がひときわ素晴らしかったです。
http://www.simmons-simmons.com/en/People/Contacts/L/Lesli-Ligorner

経歴を見るとNew York州の弁護士で、Simons & Simons の中国事務所のパートナーとなっています。

会社買収時のリスク調査の方法、リスクを発見した後の対応方法について、明快に、歯切れよく説明する様子の格好よさに、プレゼンテーションのお手本を見る思いでした。

よくまとめられた適当な量の資料が会場のスクリーンに映し出されていたので、終了後に資料をいただけないかとお願いすると、快く送っていただきました。
いや、この人、本当に格好いい。

2015年5月15日金曜日

ナイジェリアの弁護士

IPBA2015香港でのtea break の時間にナイジェリアから参加している女性弁護士と知り合いました。

ナイジェリアへの投資案件を扱っており、日本企業の顧客もいるとのことでした。

ナイジェリアでの会社設立の手続きについて尋ねると、外国投資家のために政府がワンストップサービスを提供しているとのことです。

日本の企業の進出状況を尋ねると、自動車メーカーが進出しており、これは政府が自動車をナイジェリア国内で生産させる方針をとったためとのことでした。

また、ナイジェリアは、天然資源が豊富だが、国内で産出されるガス、石油はほとんどが輸出向けで、国内のエネルギー供給が不安定なのが課題とのことでした。

環太平洋(Inter Pacific)と名がついているのですが、スイスの仲裁機関の案内があったり、ドバイ、アフリカからの参加者に出会ったり、環太平洋地域に限定されない会になっていました。

2015年5月14日木曜日

国際裁判管轄(家族法)

国際裁判管轄(家族法)の改正にあたり、大阪弁護士会から意見書を提出することになり、PTで親子関係のパートを担当。

集中検討会などを経て、各担当者が原稿を提出し、順調に仕上がっていたところ、この意見書の成年後見のパートに某委員会から反対意見が出された。

日本において登記された任意後見契約に関する手続きについて、日本の裁判所が管轄を有する、という意見だったのだが、任意後見人候補者が日本に居住していること、という要件を加えるべきだとの意見が出された。

その理由は、任意後見人が任意後見契約登記後に外国に転居した場合、その者を成年後見人とすることは、契約後の事情変更により、委託者の契約時の思惑と異なる可能性がある、成年後見人が外国に居住していると、後見監督人の監督が及にくい、という2点だった。

契約時に予期しない転居かもしれないが、予定されていたかもしれない。もし予定されていたのであれば、そういった事情のもとで委託していたのに、委託した人が成年後見人にならない、という事態が生じる。

受託者を選任することが委託者の利益を害する場合であれば、裁判所は選任をしない、という判断をすればよいだけである。
また、法律上、本人のために特に必要があれば、法定後見開始決定をすることができる、とされているし、後見監督人からの任意後見人解任請求の制度もある。

反対意見は、当該任意後見人を成年後見人とすべきか、ということと、裁判管轄権の有無を区別しそこなっているように思われる。

日本に登記されている任意後見契約に日本の裁判管轄権が及ばないことがある、ということには違和感がある、というより大いにおかしい。

PT意見に対する他の委員会の反対意見にさらに反対意見を提出するというのはどうかとも思ったが、上記理由をPTのMLに提出したところ、PTの意見として提出しようということになった。

無事、原案どおり常議委員会を通過したとの連絡があった。



2015年5月13日水曜日

外国送達(アメリカ)

アメリカ在住者から日本にいる相手を訴えたい、ハーグ条約に基づく書類の送達を日本の外務省にしたいから日本の弁護士を雇いたいとのメールが届く。

この場合のハーグ条約は、「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約」を意味するということはすぐにわかったが、日本の弁護士を雇って日本の外務省に書類を提出したい、の意味がよくわからない。

この条約の10条は、留保をしない限り、外国にいる者に対して直接に裁判上の文書を郵送する権能を妨げない、としており、日本はこの条項を留保していない。
そして、アメリカでは、裁判所ではなく、原告が被告に訴状を送付するシステムであるため、アメリカの原告から直接日本の被告に訴状が届く、という事態が生じうる、ということは学生時代に習った。なお、ドイツはこの条項を留保しているので、ドイツ国内にいる被告に対してこのようなことが行われることはない。日本の法制度からすれば留保すべき条項のはずだが、当時の担当者が、当事者が直接訴状を送付する制度が世界に存在すると思っていなかったために留保しなかった、という話を聞いたことがある。

それはそれとして、メールの内容は、この条項で直接送付したい、という話でもない。

日本の裁判所に、外国にいる者を相手として訴訟を提起するときには、裁判所に訴状を提出し、裁判所から最高裁判所、最高裁判所から日本の中央当局、日本の中央当局から被告所在地の大使館、大使館からその国の中央当局、というルートになる。
条約にも、「嘱託国の法律上権限を有する当局又は裁判所付属吏は」、「受託国の中央当局に対し」、要請書を送付する、となっているから、嘱託国の当局でも裁判所の官吏でもない被告所在地の弁護士が原告代理人として「受託国の中央当局」に訴状を送付する、ということはないだろう。

よくわからない。

アメリカの送達条約の実務がわからないが、条約上は中央当局か裁判所の関与が必要なので、アメリカの弁護士にまず相談するようにと返事を返した。

その後、ネットで検索していると、http://www.usmarshals.gov/process/foreign_process.htm が見つかった。アメリカでの外国送達は、連邦裁判所執行官への申し立てとなっている。

その他、外国にいる被告を訴えるのに裁判管轄があるか、という問題もある。

人も物も取引も簡単に国境を越えるが、システムの違いや国家主権が関与すると、種々面倒くさい。