2015年5月13日水曜日

外国送達(アメリカ)

アメリカ在住者から日本にいる相手を訴えたい、ハーグ条約に基づく書類の送達を日本の外務省にしたいから日本の弁護士を雇いたいとのメールが届く。

この場合のハーグ条約は、「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約」を意味するということはすぐにわかったが、日本の弁護士を雇って日本の外務省に書類を提出したい、の意味がよくわからない。

この条約の10条は、留保をしない限り、外国にいる者に対して直接に裁判上の文書を郵送する権能を妨げない、としており、日本はこの条項を留保していない。
そして、アメリカでは、裁判所ではなく、原告が被告に訴状を送付するシステムであるため、アメリカの原告から直接日本の被告に訴状が届く、という事態が生じうる、ということは学生時代に習った。なお、ドイツはこの条項を留保しているので、ドイツ国内にいる被告に対してこのようなことが行われることはない。日本の法制度からすれば留保すべき条項のはずだが、当時の担当者が、当事者が直接訴状を送付する制度が世界に存在すると思っていなかったために留保しなかった、という話を聞いたことがある。

それはそれとして、メールの内容は、この条項で直接送付したい、という話でもない。

日本の裁判所に、外国にいる者を相手として訴訟を提起するときには、裁判所に訴状を提出し、裁判所から最高裁判所、最高裁判所から日本の中央当局、日本の中央当局から被告所在地の大使館、大使館からその国の中央当局、というルートになる。
条約にも、「嘱託国の法律上権限を有する当局又は裁判所付属吏は」、「受託国の中央当局に対し」、要請書を送付する、となっているから、嘱託国の当局でも裁判所の官吏でもない被告所在地の弁護士が原告代理人として「受託国の中央当局」に訴状を送付する、ということはないだろう。

よくわからない。

アメリカの送達条約の実務がわからないが、条約上は中央当局か裁判所の関与が必要なので、アメリカの弁護士にまず相談するようにと返事を返した。

その後、ネットで検索していると、http://www.usmarshals.gov/process/foreign_process.htm が見つかった。アメリカでの外国送達は、連邦裁判所執行官への申し立てとなっている。

その他、外国にいる被告を訴えるのに裁判管轄があるか、という問題もある。

人も物も取引も簡単に国境を越えるが、システムの違いや国家主権が関与すると、種々面倒くさい。





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