本日開催された「アジア諸国における外国仲裁判断の承認と執行」セミナーにおいて、渡邉惺教授が、日本では条約優位説がとられているが、これは条約が国家間の義務を定めていたときのものであり、今日のように、条約が直接個人の権利義務を定める場合には、条約優位説ではなく、手続法が実体法か、条約と法律との先後関係などを考慮して条約と法律のいずれが優先するのかを決するべきではないか、との意見を出された。
また、同教授は、New
York
Conventionの解釈にずれがあり、仲裁判断が承認・執行されない国との間では、政府は二国間条約を締結して問題を解決すべきである、との意見も出された。
日本の法学部の憲法の授業で、条約と法律が矛盾した場合、条約が優先すると習っており、これが世界中どこでもそうだと信じていたため、米国の国際取引法の授業で、条約と連邦法とが矛盾するときには、後法が優先する(州法は連邦が締結した条約に劣後する)と聞いたときには本当に驚いた。あまりに驚いたので、友人のドイツ人弁護士に、アメリカ人はこんなことを言っていると言うと、当然だ、ドイツでもそうだ、と言われ、さらに驚いた。一方的に法律で条約を破棄した場合、相手国との関係はどうするのか、と尋ねたら、それは別の問題だとのことだった。
もともとの問題提起は、インドネシアでは、New
York
Conventionの要件に加え、仲裁人がインドネシア裁判所に仲裁判断の登録をしなければ承認執行の申し立てができない、また、仲裁地国のインドネシア大使館が発行するインドネシアと当該国の間に承認と執行の条約が存在することの証明書が必要、となっているがおかしいのではないか、というものだった。
なお、インドネシアでは汚職がひどく、政府が取締りを強化したところ、裁判官に贈賄したという理由で最初の外国人逮捕者がでて、日本人だった、とのこと。
さらに、UNCITRAL仲裁モデル法2006年改正では承認・執行に仲裁合意の原本を要求していないが、New
York Conventionでは合意の原本が必要とされているため、原本を紛失している場合、もともとFax,
e-mailでの合意であって、両当事者が署名した原本がない場合はどうするのか、という問題提起もなされていた。
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