2014年3月20日木曜日

外国公務員への贈賄罪(不正競争防止法)

日本交通技術(JTC)が外国の公務員に事業の受注の見返りにリベートの提供をしていたことが発覚したとの記事。
事業の受注の見返りにリベートを渡すことは、公平な競争を阻害する行為であり、国内法では、不正競争防止法18条(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)で禁止されている。
条文はちょっと読みにくいが、分解すると以下のようになる。

何人も、外国公務員に対し、
国際的な商取引に関し
営業上の不正の利益を得るために、
外国公務員に、その職務に関する行為をさせ、
             もしくは、させないこと
    または、
       その地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ
                               もしくは、させないこと
   を目的とし 
金銭その他の利益を供与し、
     または、その申し込み
         もしくは、約束
をしてはならない。

利益供与の対象は外国の公務員のみであり、私人間のリベートは含まない。(英国法では私人間を含む)

禁止されている行為は、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得る目的とするものであり、商取引に関しない事柄について賄賂を渡すことは規制の対象外である。

米国では連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)で、外国公務員に対する贈賄と禁じているが、1つの除外規定と、2つの抗弁事由が置かれている。
  政府のルーティン行為は規制の対象から除外する。
  抗弁事由
   1 当該国でその支払いが合法であるとの法律(written law)があるとき
   2 製品やサービスのプロモーション、デモンストレーション等のための旅費、宿泊費など善意の合理的な支払い

FCPAの名宛人は、SECに書類提出義務のある会社、米国企業、米国市民、米国居住者、米国の領域内で行為する非米国企業及び非米国人とされている。
なお、米国内での行為には、送金にあたり米国内の銀行口座が関与しても該当するとされる。

米国企業でコンプライアンスを担当する弁護士とFCPAについて話をする機会があったので、同法がすべての外国公務員への贈賄を規制していない理由を尋ねたところ
  1 国際取引の公正な競争を保護することが目的
  2 贈収賄が常態化している国で米国企業の関係者のみすべての贈賄を禁止すると、米国民に身体、生命の危険がお   よぶおそれがあるから

とのことだった。







2014年3月13日木曜日

技術海外流出で逮捕状の記事(不正競争防止法)

朝刊に、東芝の技術(営業秘密)が従業員に持ち出され、外国企業に流出したことで逮捕状が出されたとの記事。


記事によれば、東芝と技術提携をしていた半導体メーカーの元技術者が、東芝の工場内でデータをコピーし、その後韓国企業に転職し、データーを転職先に提供した疑いがあるとのこと。

不正競争防止法21条が適用されたのだろう。

不正競争防止法でデーターが保護されるためには、「営業秘密」である必要がある。

ある情報が「営業秘密」であるとされるためには、

1 秘密として管理されていたこと
2 有用な情報であること
3 その情報が公知のものでないこと

のすべての要件を満たしている必要がある。

有用でかつ秘密の情報を有していても、誰でも簡単にアクセスできるような管理をしていては、盗まれても「営業秘密」が盗まれたという扱いにはならない。

「営業秘密」の開示を受けた者が一定の行為をしたときには、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金という規定が置かれている(21条)。

21条1項には営業秘密の侵害について1号から7号まであるけど、記事からすると、これかな?

3号
営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次の方法でその営業秘密を領得した者
ロ 営業秘密記録媒体等の記録の複製の作成

7号 
不正の利益を得る目的で2号で営業秘密を取得し、その営業秘密を使用し、または開示した者

記事によれば営業秘密を持ち出したとされるのは福岡県内の50代男性。2008年ころにコピーして持ち出し、韓国企業に転職したが、現在は韓国企業も退職、とされる。

韓国企業に転職し、持ち出した営業秘密を開示した後、数年で退職して日本に戻った?

転職の誘いをかけ、営業秘密を持ってくれば多額の報酬を払うという話だったのか、あるいは、勤務先を解雇されることを予想し、営業秘密を持ち出して転職に利用しようとしたのか?

従業員の解雇、転職の際に営業秘密が持ち出されないよう管理するのは困難。
秘密としてきっちり管理をしていても、それをすり抜けてコピーがなされてしまう。

そもそも営業秘密がコピーされ、持ち出されたことを証明することさえ容易ではない。
どうやって発覚したのだろう。

ちなみに、新日鐵がポスコに営業秘密を盗まれたときは、ポスコが中国企業に営業秘密を盗まれた事件の裁判で、中国企業が、盗んだ情報はポスコの情報ではなく、ポスコが保有する新日鐵の営業秘密だと言ったために発覚したと先日の弁護士会の研修で聞いた。

今後同様の事件が起きるのをどうやって防止するか。
営業秘密の持ち出しが刑事事件となることを世間に示すことで抑止力となるか。