2015年6月29日月曜日

ユニクロ下請け工場の労働環境報告書(CSR)

大学のとき、法哲学の松浦教授が、私たちは、自分が使っている鉛筆でさえどのようにして作られているか知らない、とおっしゃった。
そのときは単なる観念的、思考実験的な話だと思った。

ヒューマンライツナウの、香港のSACOMと共同作成した中国国内ユニクロ下請け工場における労働環境調査報告書に関する講演を聞いたとき、身の回りの物でさえどのようにして作られているか知らない、ということが何を意味するのかが少しわかった気がした。

報告されているのは、長時間にわたる過重労働、法律どおりに支払われない時間外給与、工場内の異常に高い気温、危険な設備、綿ぼこりが舞う換気されない作業場、適切に管理されていない有毒化学物質、代表を持たない労働者、といった「低価格で高品質なカジュアルウエア」の製造現場だった。
「服でよりよい人生を、誰にでも、いつでも」の哲学を掲げ「ビジネスを通じて世界中の人々の生活をより豊かに」することを最大のミッションとしている企業との紹介が製造現場の異常さを際立たせている。

会場からは、なぜファーストリテイリングにばかり改善要求をするのか、間に入っている日本の商社の方がよほど大企業だろう、とか、労働環境に責任を負っているのは中国工場の中国経営者だろう、という質問がだされる。
異なる法人格のする行為に責任はない、という主張であり、法律的には正しい。しかし、問われているのは企業の社会的責任であり、下請け工場の劣悪な労働環境が報告されることで傷つくのは企業のブランドイメージである。

報告を支えているのは、国連のRuggie原則。経営陣が世界の流れを知らずに、「法的には責任がない」という主張を繰り返せば、会社に思わぬ損害を与える可能性があり、対応を誤ったことが過失とされるおそれがある。

http://www.ohchr.org/Documents/Publications/GuidingPrinciplesBusinessHR_EN.pdf

http://www.unic.or.jp/texts_audiovisual/resolutions_reports/hr_council/ga_regular_session/3404/


報告者の中島先生によれば、ファーストリテイリングは勧告に対し、当初速やかに対応した、今後の推移を見守りたい、とのことだった。
また、労働者からの聞き取りによれば、買い取りブランドが視察に来るときには、決められた防護服を着るよう命じられている、来訪にあわせて掃除をする、とも書いてあるので、下請け工場の視察を頻繁にしていても、問題発見は簡単ではないのかもしれない。

先日梅田の阪急百貨店のアーバンヘルシーフェアで、フェアトレードのスカートを購入した。この商品を購入することはインド西部のスラム街の女性の援助につながるという説明書がついている。使われている染料には有毒化学物質は含まれていない、とも書いてある。

コーヒーもチョコレートもフェアトレード商品が販売されているのは知っている。が、そうでない同様の商品に比べてやや価格が高い。いつもフェアトレードを選択しているわけではない。

けれど、スカートが風にそよぐのを見てインドを想像し、世界に対してほんの少し正しいことをした気分になれるのは悪くないと思った。

この企画をしたデパートの担当者の時流に対する嗅覚には拍手を送りたい。

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