ベネッセから流出した顧客名簿をジャストシステムが使用したとのニュース。
業者にとって顧客名簿は財産である。潜在的顧客の住所等を収集するのには時間と手間がかかる。また、競合関係にある他社の顧客の住所や氏名がわかれば、他社から顧客を引き抜くことも可能になる。そのような名簿は、秘密として管理されていれば、営業秘密として法律で保護される対象である。
とはいえ、競合他社が自社の顧客に広告を送っただけでは、自社の名簿が相手の手に渡ったことの証明にはならない。独自に作成した名簿だと言われと証明が困難である。
自社の名簿に特徴的な内容が、相手が使用した名簿に含まれていれば、自社の名簿が使用された可能性が高まる。
今回の事件を報じる記事には、一部の顧客が実際と異なるマンション名を伝えていたのが含まれている、記載されているのは、名簿が流出したことを示唆するものだろう。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140710/crm14071020430016-n1.htm
名簿が流出した場合に備えて、会社の役員の自宅を顧客名簿にいれておく、住所の一部を意図的に間違えたものを入れておく、という方法があるため、実際と異なるマンション名は、顧客の住所ではなく、会社によって意図的に記載されていた会社関係者のものかもしれない。
なお、ジャストシステムは名簿業者から買ったと言っているとのことだが、名簿が不正に取得されたものであれば、「業者から買ったから問題がない」ということにはならない。
不正競争防止法2条には、不正取得が介在したことを知って、もしくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得する行為、不正開示行為があったことを知って、もしくは重大な過失により知らないで営業秘密を使用する行為も不正競争となるとされている。
顧客名簿が不正取得、不正開示されたものであることを知っていた場合だけでなく、知らなかったことについて重大な過失がある、とされれば、その取得や使用は不正競争行為となる。
弁護士神川朋子のブログです。国際取引のルール、海外との取引の契約に関すること、国際取引研究会での議論など、国際取引に関するあれころを記載しています。日本の平和と豊かさを維持するためには外国との取引を活発にすることが不可欠であると考えています。海外との取引をなさる個人および企業を応援しています。
2014年7月11日金曜日
2014年6月13日金曜日
インターネット広告の地域を制限する判決
昨日の友新会不正競争防止法研究会で取り上げられた判決の主文がちょっと不思議な感じがする。
東京地裁判平成25年11月21日判決商号等使用禁止請求事件
主文
東京地裁判平成25年11月21日判決商号等使用禁止請求事件
主文
(1) 被告は,各種広告,インターネットのホームページ,事業案内,
営業用パンフレット,営業用封筒,便せん,社員用名刺及び看板等
に表示する又は新聞雑誌等の記事として掲載させる等の方法で,老
人介護に関連する事業の営業表示として,「メディカルケアプラン
ニング」又は「MEDICAL CARE PLANNING」(小文字の表記を含む。)の名称を使用してはならない。
(2) 被告は,関東地方(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,茨城県,栃木県及び群馬県)において,前記(1)記載の方法で,老人介護に 関連する事業の営業表示として,「株式会社MCP」の商号及び別紙標章目録(2)記載の標章を使用してはならない。
(1)はわかるのだが、(2)は前記(1)の方法で関東地方において商号、商標を使用してはならない、となっている。前記(1)の方法には、「インターネットのホームページ」が含まれている。
つまり、(2)は地域を限定してインターネットのホームページで商号、商標を使用してはならないとされている。
インターネットのホームページ上の商号や商標の表示を一定地域で閲覧不能にする方法はあるのだろうか?
この主文を見て思い出したのが、国際取引における地域限定独占販売契約におけるインターネットによる広告の扱い。
アメリカの会社が欧州各国のそれぞれの会社と独占販売契約を締結し、欧州各国の会社は自国以外でactie salesをしてはいけないとの内容が契約に含まれていた場合に、インターネットで広告すると条項違反となるか。
Prof. Dodgeの国際取引法のクラスで、インターネット広告はURLに付されている国名で判断する、と聞いた記憶がある。
.jpなら日本における広告であり、.ukなら英国での広告となる。
仮に.jpのページが韓国語で書かれていて明らかに韓国向け広告であっても、そのような事情は斟酌されない、ということだった。
アメリカならそうだろう。
英語で書いたら英国向け、スペイン語で書いたらスペイン向けと言われても困る。
それではこのルール、日本でもこれでよいのだろうか?
仮にこのルールが日本でも妥当するとして、最初の問題に戻るが、日本国内の地域限定インターネット広告というのは、やはりおかしい。
日本国内一律に.jpで、.kanntoとか.hokkaidoというのはないと思う。
形式的に過ぎるのか、法律が現実と乖離しているのか、あるいは何か誤解があったのか。
(原告の請求は地域を限定していないので一部認容判決)
広告禁止の地域を制限してもらっても被告としてはあまり嬉しくないと思う。
(2) 被告は,関東地方(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,茨城県,栃木県及び群馬県)において,前記(1)記載の方法で,老人介護に 関連する事業の営業表示として,「株式会社MCP」の商号及び別紙標章目録(2)記載の標章を使用してはならない。
(1)はわかるのだが、(2)は前記(1)の方法で関東地方において商号、商標を使用してはならない、となっている。前記(1)の方法には、「インターネットのホームページ」が含まれている。
つまり、(2)は地域を限定してインターネットのホームページで商号、商標を使用してはならないとされている。
インターネットのホームページ上の商号や商標の表示を一定地域で閲覧不能にする方法はあるのだろうか?
この主文を見て思い出したのが、国際取引における地域限定独占販売契約におけるインターネットによる広告の扱い。
アメリカの会社が欧州各国のそれぞれの会社と独占販売契約を締結し、欧州各国の会社は自国以外でactie salesをしてはいけないとの内容が契約に含まれていた場合に、インターネットで広告すると条項違反となるか。
Prof. Dodgeの国際取引法のクラスで、インターネット広告はURLに付されている国名で判断する、と聞いた記憶がある。
.jpなら日本における広告であり、.ukなら英国での広告となる。
仮に.jpのページが韓国語で書かれていて明らかに韓国向け広告であっても、そのような事情は斟酌されない、ということだった。
アメリカならそうだろう。
英語で書いたら英国向け、スペイン語で書いたらスペイン向けと言われても困る。
それではこのルール、日本でもこれでよいのだろうか?
仮にこのルールが日本でも妥当するとして、最初の問題に戻るが、日本国内の地域限定インターネット広告というのは、やはりおかしい。
日本国内一律に.jpで、.kanntoとか.hokkaidoというのはないと思う。
形式的に過ぎるのか、法律が現実と乖離しているのか、あるいは何か誤解があったのか。
(原告の請求は地域を限定していないので一部認容判決)
広告禁止の地域を制限してもらっても被告としてはあまり嬉しくないと思う。
2014年3月20日木曜日
外国公務員への贈賄罪(不正競争防止法)
日本交通技術(JTC)が外国の公務員に事業の受注の見返りにリベートの提供をしていたことが発覚したとの記事。
事業の受注の見返りにリベートを渡すことは、公平な競争を阻害する行為であり、国内法では、不正競争防止法18条(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)で禁止されている。
条文はちょっと読みにくいが、分解すると以下のようになる。
何人も、外国公務員に対し、
国際的な商取引に関し
営業上の不正の利益を得るために、
外国公務員に、その職務に関する行為をさせ、
もしくは、させないこと
または、
その地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ
もしくは、させないこと
を目的とし
金銭その他の利益を供与し、
または、その申し込み
もしくは、約束
をしてはならない。
利益供与の対象は外国の公務員のみであり、私人間のリベートは含まない。(英国法では私人間を含む)
禁止されている行為は、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得る目的とするものであり、商取引に関しない事柄について賄賂を渡すことは規制の対象外である。
米国では連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)で、外国公務員に対する贈賄と禁じているが、1つの除外規定と、2つの抗弁事由が置かれている。
政府のルーティン行為は規制の対象から除外する。
抗弁事由
1 当該国でその支払いが合法であるとの法律(written law)があるとき
2 製品やサービスのプロモーション、デモンストレーション等のための旅費、宿泊費など善意の合理的な支払い
FCPAの名宛人は、SECに書類提出義務のある会社、米国企業、米国市民、米国居住者、米国の領域内で行為する非米国企業及び非米国人とされている。
なお、米国内での行為には、送金にあたり米国内の銀行口座が関与しても該当するとされる。
米国企業でコンプライアンスを担当する弁護士とFCPAについて話をする機会があったので、同法がすべての外国公務員への贈賄を規制していない理由を尋ねたところ
1 国際取引の公正な競争を保護することが目的
2 贈収賄が常態化している国で米国企業の関係者のみすべての贈賄を禁止すると、米国民に身体、生命の危険がお よぶおそれがあるから
とのことだった。
2014年3月13日木曜日
技術海外流出で逮捕状の記事(不正競争防止法)
朝刊に、東芝の技術(営業秘密)が従業員に持ち出され、外国企業に流出したことで逮捕状が出されたとの記事。
記事によれば、東芝と技術提携をしていた半導体メーカーの元技術者が、東芝の工場内でデータをコピーし、その後韓国企業に転職し、データーを転職先に提供した疑いがあるとのこと。
不正競争防止法21条が適用されたのだろう。
不正競争防止法でデーターが保護されるためには、「営業秘密」である必要がある。
ある情報が「営業秘密」であるとされるためには、
1 秘密として管理されていたこと
2 有用な情報であること
3 その情報が公知のものでないこと
のすべての要件を満たしている必要がある。
有用でかつ秘密の情報を有していても、誰でも簡単にアクセスできるような管理をしていては、盗まれても「営業秘密」が盗まれたという扱いにはならない。
「営業秘密」の開示を受けた者が一定の行為をしたときには、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金という規定が置かれている(21条)。
21条1項には営業秘密の侵害について1号から7号まであるけど、記事からすると、これかな?
3号
営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次の方法でその営業秘密を領得した者
ロ 営業秘密記録媒体等の記録の複製の作成
7号
不正の利益を得る目的で2号で営業秘密を取得し、その営業秘密を使用し、または開示した者
記事によれば営業秘密を持ち出したとされるのは福岡県内の50代男性。2008年ころにコピーして持ち出し、韓国企業に転職したが、現在は韓国企業も退職、とされる。
韓国企業に転職し、持ち出した営業秘密を開示した後、数年で退職して日本に戻った?
転職の誘いをかけ、営業秘密を持ってくれば多額の報酬を払うという話だったのか、あるいは、勤務先を解雇されることを予想し、営業秘密を持ち出して転職に利用しようとしたのか?
従業員の解雇、転職の際に営業秘密が持ち出されないよう管理するのは困難。
秘密としてきっちり管理をしていても、それをすり抜けてコピーがなされてしまう。
そもそも営業秘密がコピーされ、持ち出されたことを証明することさえ容易ではない。
どうやって発覚したのだろう。
ちなみに、新日鐵がポスコに営業秘密を盗まれたときは、ポスコが中国企業に営業秘密を盗まれた事件の裁判で、中国企業が、盗んだ情報はポスコの情報ではなく、ポスコが保有する新日鐵の営業秘密だと言ったために発覚したと先日の弁護士会の研修で聞いた。
今後同様の事件が起きるのをどうやって防止するか。
営業秘密の持ち出しが刑事事件となることを世間に示すことで抑止力となるか。
記事によれば、東芝と技術提携をしていた半導体メーカーの元技術者が、東芝の工場内でデータをコピーし、その後韓国企業に転職し、データーを転職先に提供した疑いがあるとのこと。
不正競争防止法21条が適用されたのだろう。
不正競争防止法でデーターが保護されるためには、「営業秘密」である必要がある。
ある情報が「営業秘密」であるとされるためには、
1 秘密として管理されていたこと
2 有用な情報であること
3 その情報が公知のものでないこと
のすべての要件を満たしている必要がある。
有用でかつ秘密の情報を有していても、誰でも簡単にアクセスできるような管理をしていては、盗まれても「営業秘密」が盗まれたという扱いにはならない。
「営業秘密」の開示を受けた者が一定の行為をしたときには、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金という規定が置かれている(21条)。
21条1項には営業秘密の侵害について1号から7号まであるけど、記事からすると、これかな?
3号
営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次の方法でその営業秘密を領得した者
ロ 営業秘密記録媒体等の記録の複製の作成
7号
不正の利益を得る目的で2号で営業秘密を取得し、その営業秘密を使用し、または開示した者
記事によれば営業秘密を持ち出したとされるのは福岡県内の50代男性。2008年ころにコピーして持ち出し、韓国企業に転職したが、現在は韓国企業も退職、とされる。
韓国企業に転職し、持ち出した営業秘密を開示した後、数年で退職して日本に戻った?
転職の誘いをかけ、営業秘密を持ってくれば多額の報酬を払うという話だったのか、あるいは、勤務先を解雇されることを予想し、営業秘密を持ち出して転職に利用しようとしたのか?
従業員の解雇、転職の際に営業秘密が持ち出されないよう管理するのは困難。
秘密としてきっちり管理をしていても、それをすり抜けてコピーがなされてしまう。
そもそも営業秘密がコピーされ、持ち出されたことを証明することさえ容易ではない。
どうやって発覚したのだろう。
ちなみに、新日鐵がポスコに営業秘密を盗まれたときは、ポスコが中国企業に営業秘密を盗まれた事件の裁判で、中国企業が、盗んだ情報はポスコの情報ではなく、ポスコが保有する新日鐵の営業秘密だと言ったために発覚したと先日の弁護士会の研修で聞いた。
今後同様の事件が起きるのをどうやって防止するか。
営業秘密の持ち出しが刑事事件となることを世間に示すことで抑止力となるか。
2013年12月5日木曜日
経営者保証に関するガイドラインが公表されました
国際取引とは直接の関係はありませんが、
平成25年12月5日、経営者保証に関するガイドライン研究会により、「経営者保証に関するガイドライン」が公表されました。
http://www.zenginkyo.or.jp/news/2013/12/05140000.html
本ガイドラインは、中小企業に対する金融資産を有する金融機関等を対象債権者とし、(1)保証契約の主たる債務者が中小企業 (2)保証人が個人であり、主たる債務者である中小企業の経営者であること (3)主たる債務者と保証人の双方が弁済に誠実であり、財産状況等を適時適切に開示していること (4)主たる債務者及び保証人が反社会的勢力でないこと、といった要件を満たしている場合に適用されます。
ガイドラインが適用されると
1 保証金額は、形式的に保証金額を融資額と同額とせず、保証人の資産、主たる債務者の信用状況等を総合的に勘案して設定する。
2 保証の履行請求は、期限の利益を喪失した日等の一定の基準日における保証人の資産の範囲内とする
または
保証人の債務整理を支援する専門家の確認を受けた場合に、保証の履行請求額を履行請求時の保証人の資産の範囲内とする
といった対応を誠実に実施する旨を保証契約に規定する
3 既存の保証契約の適切な見直しを申し入れに対し、対象債権者は、真摯かつ柔軟に検討を行い、検討結果について主たる債務者及び保証人に対して丁寧かつ具体的に説明する
4 保証債務の整理の手続きが適用される
5 保証債務の整理において、保証人の手元に一定の資産を残すことができる
といったメリットを受けることができます。
ただし、保証債務の整理の手続きに必要な機関の受け皿が、現時点では、特定調停くらいしかない、という問題があります。
このガイドラインは、平成26年2月1日から適用となり、保証債務の履行前であれば、契約日が平成26年2月1日以前であっても適用されます。
2013年12月4日水曜日
ベトナム工場(ロンドウック工業団地)の話しは乗るべきか?
11月2日に開催された「関西を元気にする国際フォーラム」で、近畿経済産業局通商部国際事業課の担当者が、近畿地域の中小企業の海外展開支援業務について説明をした。
その説明によれば、近畿経済産業局とベトナムドンナイ省とが、ドンナイ省において、関西の裾野産業が集積するモデル事業を推進するために双方で協力を行う、具体的には、関西の中小企業がロンドウック工業団地への進出のサポートをする、とのこと。日系企業が現地で抱えるビジネス課題の解決を図る「ドンナイ省関西デスク」も設置されたとのことだった。
要するに政府が、関西の中小企業がベトナムに工場を作るのを支援するというものだ。
ベトナムは中国と比べても人件費が安いと言われている(実際にデータもある)。
さてこの企画、近畿経済産業局の話しを聞いていると、よいことのように聞こえるのだが、本当にそうだろうか。先日の瀧本哲史先生が講演で言われたことととあわせて考えてみよう。
瀧本先生の話しには、
日本企業のアジア進出の多くは失敗に終わっている。
P社がマレーシアに工場を移転させたため、P社と取引きをしていた関西の中小企業は仕事がなくなった。
関西の中小企業が海外に移転すると、大阪から産業が減り、大阪の空洞化が促進される。
という情報が含まれていた。
これらを総合して考えると、近畿経済産業局がいたれりつくせりで関西の中小企業にベトナムの工業団地に工場を作らせるのは、P社の移転で仕事がなくなった大阪の中小企業の問題をベトナム工場の提案をすることで当面の解決とする、一方、ベトナム工場が事業として成功するかどうかはかなり怪しい、さらに中小企業が出て行った後の関西経済はさらに落ち込む、ということになる。
これは、「関西を元気にする」事業か?
ただし、海外進出が必ず失敗するというわけでもない。瀧本先生の講演から成功するための要因を拾うと、事前に調査し、計画をたて、契約交渉をきちんとし、事業の終わらせ方を契約前に考え、事業がうまくいかなかったときの手当をしておく、ということになる。
瀧本先生曰く、
「授業料と思って」という社長が多いが、不必要な「授業料」は払う必要がない、事前にちゃんとした専門家に相談しよう。
また、こうも仰っていた。「流行だから、同業他社が行くから、という理由で行くと失敗します。」
行くか、行かないか、むつかしい経営判断だ。信頼のおける相談相手となる専門家をまず見つけることか。
2013年12月3日火曜日
瀧本哲史准教授講演「企業の海外進出 専門家としてアドバイスすべきこと」
京都大学の瀧本徹史准教授の講演を聞きに行ってきた。同准教授によれば、講演は引き受けないことにしている、効率の悪いビジネスだから、ただし例外がある、マイノリティグループに頼まれたときは引き受ける、世界を変えるのはマイノリティだから、だそうだ。「関西」の「女性」士業の主催の会。そこまで期待されているのに、講演について講演に関する記事を書かないわけにはいかない。
講演のテーマは「企業の海外進出 専門家としてアドバイスすべきこと」
エピソード1
「京大で学生が床に座って聞く、著書はベストセラーとの評判どおり、密度が非常に濃く、かつ面白い。とても1回の記事で書ききれる内容ではないので、講演で触れられたエピソードの一つについて。
日本の企業のアジア進出がどういうものかは、1950年代にアメリカの企業が、「日本」に進出しようとしたら、というのを想像してみたらいい。日本人なら、無理だとわかるだろう。日本ではビジネスについて規制が細かく、日本社会の事情に通じていないアメリカ人が日本に進出して成功するとは思えなかっただろう。今、日本企業がアジアに進出するというのはそれと同じだ。アジアへの進出は、アメリカへの進出とは環境が違う。アジアではアメリカでは起こりえないことが起こる。
おそらく多くのアメリカ企業が、高度成長と聞いて日本進出を試み、損失を出しだろう。しかし、その中でもいくつか成功した企業がある。
New
Yorkの街で多く見かけるフランチャイズは、スターバックスとサブウエイだ。いずれも日本に進出している。スターバックスは多数の店舗を展開して成功し、サブウエイの店舗は少なく、フランチャイズ事業として成功していない。この違いはどこに由来するのか?スターバックスと提携日本企業の契約書の中には、一定期間内に一定数の店舗を出店することとの違約金付きの条項があり、サブウエイと提携日本企業との間には同様の契約条項が入っていない。提携日本企業の法務がしっかりしており、また契約にあたって自己の言い分を通すだけの力を持っていたために、そのような内容の契約になったのだろう。」
以下感想。
契約条項は自己に有利だが、事業としては失敗。
このエピソードを聞いて、弁護士としてそれではどういうアドバイスをすればよいのか考えてみた。
「この条項は、一見不利だが、事業の成功のために入れておいた方がよい」は「弁護士」として正しいアドバイスか?
契約書を顧問弁護士の事務所に添付メールで送り、この契約書に自社に不利益な内容が含まれていないかチェックしろ、と書けば、弁護士は、契約の中のクライアントが義務を負う条項にまずフラッグが立てるだろう。そして、不利益な項目をチェックしろと言われた弁護士は、ビジネスの状況によっては出店できない可能性があるので、この条項ははずしておいた方がいい、というアドバイスをするだろう。
仮にフランチャイズというものは、一定期間内に一定数の店舗の展開をして知名度を上げなければ事業として成功しない、ということを会社が弁護士に説明をしていたらアドバイスは違っていただろうか?やはり、違約金のついた義務条項は、交渉の力関係で排除できるのであれば排除しておきたい。排除した上で、企業が事業センスとして自発的に当初赤字でも店舗展開をすればよい、と言うのではないだろうか?
ここは専門家のアドバイスとひとくくりにできない、投資アドバイザーと弁護士の役割の違いか。
専門家としてアドバイスすべきこと、というテーマだが、このエピソードから、どういう教訓を引き出すのか、悩ましいところである。
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